嫁です。金沢21世紀美術館からほど近く、武家屋敷の古い街並みに直線がつくる白い箱がのぞきます。
鈴木大拙
金沢出身の仏教哲学者である、鈴木大拙の足跡をたどる文化施設です。大拙は日本の禅文化を海外に広く知らしめました。
建築
設計は建築家、谷口吉生さん。
ニューヨーク近代美術館(MoMA)新館、豊田市美術館、最近ではGINZA SIXも手掛けた名美術館に数々の実績をもつ建築家です。
建築は、「玄関棟」「展示棟」「思索空間棟」を回廊で結ぶとともに、「玄関の庭」「露地の庭」「水鏡の庭」によって構成されています。この3つの棟と3つの庭からなる空間を回遊することによって、来館者それぞれが鈴木大拙について知り、学び、そして考えることが意図されています。
鈴木大拙館 公式ホームページ
「鈴木大拙館」は空間そのものが思索を促す、体験型の美術館です。
住所・営業時間
石川県金沢市本多町3-4-20
9:30~17:00(入場は16:30まで)
休館日:月曜(祝日の場合翌平日休)
アクセス
私は金沢21世紀美術館から徒歩で伺いました。約10分の道のりです。
金沢駅からもバスで向かうことができます。
北鉄バス「本多町」下車 徒歩4分
城下まち金沢周遊バス「本多町」下車 徒歩4分
表通りから少し外れた住宅街に洗練された現代的な建物が見えてきます。
入館料金
一般 310円
高校生以下 無料
館内
入館してすぐに、黒いスチールと打ちっ放しのコンクリートで挟まれた通路、内部回廊が現れます。ざわついた心がスーっと穏やかに静まります。
ほの暗い空間を進むと視線の先に、ぼうっと柔らかい光が浮かび上がります。
近づいてみると大拙さんの1枚の写真でした。
穏やかな方なんですね。
館内は3つの空間で構成されています。
展示空間で書や写真、著作など大拙を「知る」ことに始まり、学習空間で大拙の心や思想を「学ぶ」ことで、さらに思索空間で自ら「考える」ことに至る3つの行動を、施設全体で展開されています。
展示空間
「展示空間」は薄暗く、大きな明るい展示ケースと腰高のほの暗いケースが対照的に配置されています。
大拙は「ただあるがままに体験・体解することが重要」と考え、あえて作品のそばにはタイトルや作品紹介はありません。
学習空間
「学習空間」は石垣で囲まれた坪庭「露地の庭」を眺めながら、鈴木大拙関連書籍を自由に楽しめる書斎のような空間です。
大拙の名言などを紹介したカードも置いてあり、お土産に持ち帰ることもできます。
思索空間
ここで、ほの暗い空間から開放的な外部に視線が広がります。建物よりも大きな「水鏡の庭」が広がり、底面の格子がくっきり見えるほど、浅い池です。
直線でつくられた建造物は、気持ちいいほどにシンプルで心が落ち着きます。
写真左の外の回廊を進むと、白い箱につづきます。こちらの内部が「思索空間」です。天井の円形のライトからは自然光が差し込み、床には畳の腰かけがぐるりと並ぶのみ。
水の音や周囲の緑を感じ、ひとりひとりが思索にふけるスペースです。
散策路もあり、森の中へつながっていました。
おまけ
「建築が美しい」美術館ということで訪れ、ここで初めて鈴木大拙さんについて学びました。大拙さんについて学んだことは正直あまり残っていませんが、彼の思想や禅の精神に触れ、一歩新たな世界に踏み込んだ・・・という思いはあります。力の抜ける素敵な滞在となりました。
禅宗寺院の庭園や寝殿造のような日本の美意識を体感したい方、必見です。