鈴木大拙館で日本の美意識に触れる

嫁です。金沢21世紀美術館からほど近く、武家屋敷の古い街並みに直線がつくる白い箱がのぞきます。

鈴木大拙だいせつ

金沢出身の仏教哲学者である、鈴木大拙の足跡をたどる文化施設です。大拙は日本の禅文化を海外に広く知らしめました。

建築

設計は建築家、谷口吉生さん

ニューヨーク近代美術館(MoMA)新館、豊田市美術館、最近ではGINZA SIXも手掛けた名美術館に数々の実績をもつ建築家です。

建築は、「玄関棟」「展示棟」「思索空間棟」を回廊で結ぶとともに、「玄関の庭」「露地の庭」「水鏡の庭」によって構成されています。この3つの棟と3つの庭からなる空間を回遊することによって、来館者それぞれが鈴木大拙について知り、学び、そして考えることが意図されています。

鈴木大拙館 公式ホームページ

「鈴木大拙館」は空間そのものが思索を促す、体験型の美術館です。

住所・営業時間

石川県金沢市本多町3-4-20

9:30~17:00(入場は16:30まで)
休館日:月曜(祝日の場合翌平日休)

アクセス

私は金沢21世紀美術館から徒歩で伺いました。約10分の道のりです。

金沢駅からもバスで向かうことができます。
北鉄バス「本多町」下車 徒歩4分
城下まち金沢周遊バス「本多町」下車 徒歩4分

表通りから少し外れた住宅街に洗練された現代的な建物が見えてきます。

入館料金

一般    310円
高校生以下 無料

館内

入館してすぐに、黒いスチールと打ちっ放しのコンクリートで挟まれた通路、内部回廊が現れます。ざわついた心がスーっと穏やかに静まります。

ほの暗い空間を進むと視線の先に、ぼうっと柔らかい光が浮かび上がります。
近づいてみると大拙さんの1枚の写真でした。

穏やかな方なんですね。

館内は3つの空間で構成されています。

  • 鈴木大拙を知る「展示空間
  • 大拙の心や思想を学ぶ「学習空間
  • それぞれ自ら考える「思索空間

展示空間で書や写真、著作など大拙を「知る」ことに始まり、学習空間で大拙の心や思想を「学ぶ」ことで、さらに思索空間で自ら「考える」ことに至る3つの行動を、施設全体で展開されています。

展示空間

展示空間」は薄暗く、大きな明るい展示ケースと腰高のほの暗いケースが対照的に配置されています。

大拙は「ただあるがままに体験・体解することが重要」と考え、あえて作品のそばにはタイトルや作品紹介はありません。

学習空間

学習空間」は石垣で囲まれた坪庭「露地の庭」を眺めながら、鈴木大拙関連書籍を自由に楽しめる書斎のような空間です。

大拙の名言などを紹介したカードも置いてあり、お土産に持ち帰ることもできます。

思索空間

ここで、ほの暗い空間から開放的な外部に視線が広がります。建物よりも大きな「水鏡の庭」が広がり、底面の格子がくっきり見えるほど、浅い池です。

直線でつくられた建造物は、気持ちいいほどにシンプルで心が落ち着きます。

写真左の外の回廊を進むと、白い箱につづきます。こちらの内部が「思索空間」です。天井の円形のライトからは自然光が差し込み、床には畳の腰かけがぐるりと並ぶのみ。

水の音や周囲の緑を感じ、ひとりひとりが思索にふけるスペースです。

散策路もあり、森の中へつながっていました。

おまけ

「建築が美しい」美術館ということで訪れ、ここで初めて鈴木大拙さんについて学びました。大拙さんについて学んだことは正直あまり残っていませんが、彼の思想や禅の精神に触れ、一歩新たな世界に踏み込んだ・・・という思いはあります。力の抜ける素敵な滞在となりました。

禅宗寺院の庭園や寝殿造のような日本の美意識を体感したい方、必見です。

相国寺承天閣美術館で若冲に触れる

嫁です。若冲の作品を見て日本画に興味を持った方、多いのではないでしょうか。かくいう私もその一人・・・

相国寺承天閣美術館は名前のとおり、『お寺』の美術館です。京都、相国寺の境内にある美術館には、国宝5点重要文化財145点の作品が収蔵されています。

伊藤若冲、円山応挙、長谷川等伯・・・日本画の巨匠たちの作品だけでなく、千利休ゆかりの茶道具にも出会えます。

伊藤若冲ゆかりの寺院

伊藤若冲ゆかりの寺院でもあり、若冲ファンにはたまらない作品がずらり。

江戸中期、青物問屋の長男として京都に生まれた若冲は、40歳で家督を弟にゆずり、本格的に絵師としての道を歩み出します。そして、相国寺・住持大典和尚のもとで仏教や書、絵などの指導を受けたとも伝わります。こうした交遊関係から、相国寺に動植綵絵」30幅と「釈迦三尊像」3幅対寄進し、鹿苑寺(金閣寺)の大書院の障壁画を手掛けました。

承天閣美術館では、鹿苑寺の大書院の一之間、および三之間の障壁画が常設展示されています。水墨画で描き込まれた若冲の瑞々しい世界を堪能できます。

住所・営業時間

京都府京都市上京区今出川通烏丸東入

10:00~17:00(入館は16:30まで)

アクセス

地下鉄烏丸線「今出川駅」下車、徒歩約10分

京都市バス「烏丸今出川」「同志社前

拝観料

一般 800円
65歳以上・大学生 600円
中・高校生 300円
小学生 200円

館内案内

こちらのお寺の門から中に入っていきます。

美術館へと続く石畳の道です。

お庭も美しく、思わずシャッターを切りたくなります。

美術館の内部は、靴を脱いでスリッパもなく裸足で歩かなければならないので、靴下フットカバーを持参してくださいね。

伊藤若冲展

私の訪問の目的は「伊藤若冲展」でした。

2016年に東京都美術館で開催された『生誕300年記念 若冲展』。4時間待ちとも言われた大人気の企画展です。私自身は日程の都合がつかず、本物を見る機会を逃して悔やんでいたころ、京都・相国寺でのこちらの展覧会の開催を知りました。動植綵絵30幅のレプリカを間近で鑑賞できる貴重な機会に心が走りました。

展示室に入ると360度、動植綵絵」「釈迦三尊像が並び、レプリカとはいえど鳥肌が立つのを感じました。コロタイプ印刷による複製画は、私の目には本物と見紛うほどの十分な美しさでした。

コロタイプ印刷ってなーに?

コロタイプ印刷は、写真技術が生まれて間もない約150年前、フランスで発明された技術です。当時の写真は画像の保存性が低く、次第に退色してしまうのが当たり前。それを改善するために確立されたプリント技法のひとつがコロタイプ印刷です。

なめらかな濃淡表現で深みのある質感を実現し、特殊コロタイプインクを使うことによる強い耐久性が特徴で、国宝などの文化財の複製制作に活用されています。微妙な色彩変化や筆力の忠実な表現を見事に再現しています。

MEMO

コロタイプ印刷は
耐久性色彩変化を兼ね備えた製版技術で文化財の複製にぴったり

動植綵絵

伊藤若冲の「動植綵絵」は緻密な描写極彩色で描き上げられ、若冲自身の最高傑作とも名高い作品です。動植物のいきいきとした一瞬を切り取り、虫眼鏡で観察したかのような美しさが細部に宿ります。

この作品は草木や国土のように心を持たないものも、みな仏性を持ち成仏するとした生けるものに対する慈しみの心で若冲が描いたものとも言われています。

余白を大切にする日本画の概念を覆されるほど、隙間なく鮮やかな世界がぎっしり。もう技術の大渋滞です。何度ため息をついたことか・・・

1枚1枚、絵の目の前でじっくり鑑賞できたのは、レプリカ展のおかげですね。本物は大混雑で止まって観ることなどできないでしょうから。よかったよかった。

本物は宮内庁三の丸尚蔵館収蔵の皇室御物。
なかなかお目にかかる機会は少なそうです・・・

京都の仏閣の雰囲気を味わいながら日本の美に触れる・・・すてきな穴場美術館でした。

ヤマザキマザック美術館でロココなお姫様気分

嫁です。人も少なく、ゆったりと自分時間で作品鑑賞のできる美術館です。名古屋観光に加えてみては?でもロココってなんだっけ?

シャルダン、ブーシェ、フラゴナールなど、ヨーロッパの美術館ではよく見かける作品ですが、日本では目にする機会はあまりありません。ロココ美術の美しさだけでなく、あたかもタイムスリップしたかのような気分を味わいながら、作品に酔いしることができます。

概要

2019年で創業100年を迎えた、工作機械メーカーのヤマザキマザック株式会社。機械の機械、いわゆる「マザーマシン」をつくる職人さんです。こちらの私設美術館である、ヤマザキマザック美術館には、前会長である山崎照幸さんが収集された、フランス絵画やガラス、家具が収蔵されています。

当美術館は、ヴァトー、ブーシェ、フラゴナール、シャルダンといったフランスのオールドマスターをはじめとするロココの時代から、新古典主義のアングル、ロマン主義を代表するドラクロワ、写実主義、印象派、そしてエコール・ド・パリ等、18世紀から20世紀に至るフランス美術300年の流れが一望できるコレクションで構成されています。さらには19世紀末にフランスを中心に花開いたアール・ヌーヴォーの代表的な作家であるガレをはじめとする、様々な作家達のガラス工芸品、家具も展示しています。

ヤマザキマザック美術館 公式ホームページ

住所・営業時間

愛知県名古屋市東区葵1-19-30

10:00~17:30(土日祝は17:00まで)
入館は閉館の30分前まで
休館日 月曜日(祝日・休日の場合は開館、翌日休館)

アクセス

市営地下鉄東山線「新栄町」駅(1番出口)直結

屋根の下、濡れることなく辿り着けます。

入館料

一般 1000円
小・中・高校生 500円

うれしいおもてなし

ヤマザキマザック美術館には他の美術館にはあまりない、うれしいおもてなし3つ

音声ガイド

作品の背景や新たな視点を提案してくれ、美術展の案内役でもある音声ガイド。多くは有料での貸し出しですが、こちらでは無料で希望者に貸し出してださいます。

聞く・聞かないは自由ですが、私はいつも手にしてしまいます。

写真撮影

館内は原則撮影OKとなっています。

生の作品の息づかい

作家さんたちの息づかいまで感じられるように、絵画は額装からガラス板、アクリル板をはずしてあります。筆跡や細かな色彩を生で味わうなんて、とても貴重な体験です。

展示室

館内は想像よりもずっと広いです。最初に集中し過ぎると、最後は時間が足りなくなったり、疲れたりで流す・・・残念な結果になるので、気をつけてくださいね。

まずはエレベーターで5階の展示室へ上がります。

5階:フランス美術

5階は、ロココからエコール・ド・パリまでの絵画が時代順に部屋ごとに展示されています。

豪華なシャンデリアときらびやかな内装で彩られ、貴族の邸宅にでも招かれたかのよう・・・シンメトリーなデザインに深紅の壁紙、金の額縁が高貴な雰囲気を印象づけています。

部屋ごとに壁紙とソファがリンクしていて、素敵ですね。

4階:アールヌーヴォー工芸品

4階はアールヌーヴォー、アール・デコのガラス工芸作品や家具が展示されています。エミールガレやティファニー・・・昆虫たちのデザインガラスはかわいらしくもあり、美しさもあり、精巧なつくりにため息が出ます。

なかには1900年頃制作されたオルゴールも展示されています。
なんとこちら、現役で素敵な音色を奏でてくてます。時間ごとにスタッフの方が作品解説をし、オルゴールを動かしてくださいます。

まずはオルゴール鑑賞の時間をチェックして作品鑑賞を行い、100年以上も前の空気を楽しんでください。

併設施設

美術館横のオフィス棟1階には、工作機械ギャラリーも併設されています。

おまけ:ロココってなに?

ロココってよく聞くけど、本当はなんだろう?

ロココ建築、ロココ美術、ロココ様式・・・意味が分かりません。

ロココは美術史における時代の名前のひとつ。フランス語の「ロカイユ(岩・洞窟)」が語源であり、バロックのあとに続く様式です。18世紀、ルイ15世のフランス宮廷から始まったと言われています。ヨーロッパ各地の権力争いを行う王たちが、自ら王宮や館に取り入れ、豪華絢爛に飾り立てていた時代です。

18世紀には芸術の中心がイタリアからフランスに移行し、絵画はいっそう洗練されます。それまでの「男性的」で理知的なバロック様式から「女性的」で優雅で楽しいロココ様式が誕生したのです。

バロック様式
  • 男性的
  • 豪壮で華麗
  • ダイナミックな構図や誇張された動き
  • 劇的な流動性、過剰な装飾性
ロココ様式
  • 女性的
  • 繊細で優美
  • 植物の葉のような自由な曲線
  • 貝殻模様に代表される装飾

なんにせよ、お姫様気分を味わえる素敵な美術館でした。

山王美術館は知る人ぞ知る美術館 門外不出のコレクション

嫁です。大阪、難波近くにひっそりと佇む美術館。規模は小さいですが、本当におすすめです。

山王美術館 概要

山王美術館は、2009年に開館、ホテルモントレグラスミア大阪内に併設されています。ルノワールをはじめとした、名匠たちの美術作品を、洋画・日本画・陶磁器と幅広く収蔵されています。

収蔵するコレクションにより、春・夏季秋・冬季年2回、企画展が開催されます。

MEMO

主な収蔵作家:ルノワール・キスリング・ボナール・藤田嗣治・小磯良平・梅原龍三郎・荻須高徳・上村松園・横山大観・東山魁夷など

注目すべきは、山王美術館のコレクションは門外不出であることです。今までも、きっとこれからも巡回することはなく、ここを訪れないと出会えない美術作品なのです。

住所・営業時間

大阪府大阪市浪速区湊町1-2-3 ホテルモントレグラスミア大阪22階

11:00~17:00(入館は16:30まで)

休館日 土・日曜日
※2020年9月3日より休館日が月~水曜日に変更

平日のみの開館なので訪問の際はご注意を!

アクセス

  • JR「難波駅」より徒歩約1分
  • 地下鉄大阪メトロ 四つ橋線「なんば駅」北改札口30番出口
  • 地下鉄大阪メトロ 千日前線「なんば駅」西改札口より徒歩1分
  • 地下鉄大阪メトロ 御堂筋線「なんば駅」北西or北東改札口より徒歩約5分
  • 阪神・近鉄「大阪難波駅」西改札口より徒歩約1分
  • 南海「難波駅」3F北改札口or2F中央改札口より徒歩約7分

まずはホテルモントレの1階まで行き、1階のエレベーター22階のホテルフロント階へ上がります。地下にある、オフィス用のエレベーターでは美術館へは辿り着けませんのでご注意ください。

フロントロビーを越えて、右手奥のチャペルの付近に美術館の入り口があります。

入館料

  • 一般 1000円
  • 大学・高校生・中・小学生 500円

ホテル利用者には割引があるようです。またJAF会員や、「ミュージアムぐるっとパス・関西」を利用すれば半額となりますので必見です。

受付から館内まで

受付で入館料を支払い、隣のロッカーに荷物を預けます。準備ができたらスタッフの方が扉を開け、館内へ招き入れてくださいます。

一組、一組丁寧におもてなししてくださる姿勢に、作品を目にする前から心が高なります。

部屋は3つに分かれており、陶磁器日本画洋画が展示されています。展示作品数は50数点と、都会の有名企画展に比べるとこじんまりとはしていますが、落ち着いた空間で混雑もないのでゆっくり鑑賞することができます。

音声ガイドや詳細な説明パネルはありません。

企画展:フランス近代名画展

これまでに私は3回程訪れ、藤田や大観、ルノワールの作品を楽しみました。

今回は2019年の春・夏季コレクション展
コレクションでつづる フランス近代名画展」を紹介します。

ルノワール、コロー、ミレー、モネ、ルドン、ボナール、ヴラマンク、キスリング、藤田嗣治、ローランサンの作品が35作品展示されていました。

こちらが私のお気に入り作品です。

ピエール=オーギュスト・ルノワール
  • 「果物をもった横たわる裸婦」
    企画展のポスターにもなった女性の絵です。画面に斜めに配置された女性が果物や黄・オレンジ・白色の花に囲まれています。右半分の背景の暗さから感じられる陰影と左半分のぼんやりした遠景が対照的でおもしろいです。艶やかな女性の肌に思わず触れたくなってしまいます。
  • 「裸婦」
    遠くから鑑賞しても筆のタッチが分かるほど大胆に描かれているのに、絵から受け取る印象は光の輝きをまとった繊細な空気です。サーモンピンクのかわいい頬からは女性の暖かさを感じます。

山王美術館に収蔵されているルノワールの作品は、最晩年のものが多いです。リウマチを患い、症状の進行のため、補助具を用いなければ絵筆も握れなかったほど。車いすが離せない毎日だったそうですが、病気を振り払うかのような明るい色使いに、力強さや画家の人生をかけた底力を感じます。穏やかでふっと笑顔になれる、ルノワールの絵が私は大好きです。

藤田嗣治
  • 「パンを持つ少女」
    藤田独特の乳白色の肌で、いたずらっ子のようなかわいらしい女の子の絵です。藤田の絵は一見冷たく、ツンとした印象を受けますが、モデルの表情が何とも妙で、不思議と惹きつけられます。細部まできっちり描かれ、細い輪郭線は日本画の影響でしょうか。

私設の美術館がこれだけの数の藤田の作品を収蔵していることに驚きました。藤田をメインとした企画展も過去に開催されているようなので、今後新たな作品に出会えることを楽しみにしたいと思います。

ショップ

ミュージアムグッズなどのショップは併設されていません。あるのはコインロッカーの隣にポストカード売り場のみです。また、買い方も独特で、サンプルの番号をメモし、スタッフの方に渡して会計を行います。

お気に入りの作品をぜひおうちにも持って帰ってくださいね。

まとめ

こんなにすてきな作品たちと出会える美術館ですが、平日のみの営業、ホテル内併設ということもあり、案外一般の方に知られていません。

展示室に私だけ・・・で空間を独り占めなんてこともありましたよ。

自分の時間でゆっくり作品と向き合える、贅沢な時間をあなたも過ごしてみませんか。

三鷹の森ジブリ美術館で迷子になろうよ、いっしょに。

嫁です。360℃どこを見てもジブリの世界に浸れます。ジブリ好きじゃなくても行かなきゃソンソン。

の原色が粘土細工のように組み立てられ、まるっこいフォルムの外観。東京の中でも緑の多い井之頭公園に隣接して、ひょっこり不思議な建物が現れます。カラフルな巨大生物のよう。その巨大生物の中は大人もいろいろ忘れて楽しめるファンタジーな世界が広がっていました。

なかなか取れないチケットの予約方法、美術館の必見ポイントからお土産まで、実際の訪問をもとにご紹介します!!

美術館のコンセプト

日本が世界に誇る映画監督、宮崎駿さんが構想から建築のデザイン、展示企画のすべてを手掛けられています。

キャッチフレーズは

迷子になろうよ、いっしょに。

こんな美術館にしたい、という館主さん(宮崎駿監督)のお言葉です。

おもしろくて、心がやわらかくなる美術館

いろんなものを発見できる美術館

キチンとした考えがつらぬかれている美術館

楽しみたい人は楽しめ、考えたい人は考えられ、感じたい人は感じられる美術館

そして、入った時より、出る時ちょっぴり心がゆたかになってしまう美術館!

三鷹の森ジブリ美術館 公式ホームページ

住所・営業時間

東京都三鷹市下連雀1-1-83

10:00~18:00
定休日:火曜日

チケット予約方法

ローソンでチケット発券が唯一の予約方法です。

毎月10日午前10時に翌月分のチケット購入が可能となります。

購入の際に日時を指定する必要があります。毎日、10時12時14時16時の4回、入場時間が設定されています。入場制限は指定時間から30分間。入ってしまえば、入れ替えはないので自らと施設の時間の許すまで、ジブリの世界を楽しめます。

大人・大学生 1000円
高校・中学生 700円
小学生 400円
幼児(4歳以上) 100円

幼児100円ってとこがかわいい。赤ちゃんも一人前ですね。

確実にチケットを手にするために

やはり人気美術館です。土日の分はすぐに売り切れます。先着順なので、10日の10時に限りなく早くネットに張りつくことをおすすめします。

ネット予約の際は無料の会員登録が必要となるので、事前にできる登録は今のうちに済ませておきましょう。

それでも購入できなかった場合は、キャンセル待ちを狙うのです!
ネットで予約をされた方は、3日以内ローソンで購入、発券をする必要があります。そのため、その発券を怠った枠をかすめ取るのです。次は13日の10時ですよ!!

アクセス

駐車場はありませんので公共交通機関での訪問をおすすめします。

最寄駅、JR三鷹駅南口からコミュニティバスを利用すると約5分です。スタジオジブリさんがデザインしたバスも走っているそうなので、乗れるとラッキーですね。

早く出発したこともあり、私は徒歩で向かいました。JR三鷹駅南口からは歩いて約15分です。歩いたからこそ見える景色がありました。

歩く道のりまでもエンターテインメントに変えてしまう、ジブリさんは根っからの楽しませ上手です。

風の散歩道」おしゃれな風が吹いていました。

何でもない道路に街路樹、名前がつくだけでこんなにワクワクするのですね。

800m、500m、300m・・・
「はやく。はやくおいでよ。こっちだよー」
ジブリの仲間たちが迎えに来てくれているようです。

ちなみに私は500mの標識を見逃して、逆戻りしました。

到着!でも早く着きすぎた!

時計の時間からも分かるように、早く着き過ぎて門が開いていません。まさかの一番乗りでした。
スタッフの方の出勤を見守り・・・はやく開けてくれないかなぁ。

くるっと施設を外周し、柵の周りから予習します。すると・・・

あっ!屋上になんかいる!!頭が覗いてる!!

気になって、ズームイン!!

巨神兵さんではないですか!テンション上がります。

時間が早いこともあり、周りにはカフェやちょっと休める場所はありませんでした。井之頭公園のベンチで休憩し、そのときを待ちます。

やっと入場

予約時の指定時間に合わせて入場します。
もちろん一番空いていそうな10時初回入場です。

入り口ではトトロが受付係です。
じーっとこちらを見つめてます。下の窓にはまっくろくろすけ

ととろさん、チケットです。お願いします。

トトロさんに話しかけても、チケット受け取ってもらえません。
そう、こっちはニセモノ。本物はこちらです。

一番乗りしたはずですが、公園でのんびりしているうちに、人間さんがたくさん増えておりました。いつの間に!あなたたちどこから出てきたのー。

館内紹介

館内は写真撮影NGなので、気になる方はぜひ訪問をおすすめします。
ちなみに屋外や建物外観は撮影できます。

絶対に後悔しません。むしろ何度も来ても楽しい。

受付

受付の際は身分証明賞をお忘れなく。チケット表示の名前と確認されます。

受付ではチケットと交換で一人1枚、3コマの35㎜フィルムが付いたフィルムチケットがもらえます。実際に映画館で使用されていたフィルムを使用していて、2つとして同じものはない、自分だけのきっぷです。光に透かしたとき、あなたのフィルムにはどのシーンが映っていますか・・・

ちなみにジブリ美術館では小さなお子さんも立派な一人のお客様

踏み台にのぼって、受付のお姉さんからちゃんときっぷをもらっていましたよ。

エントランス~ホール

フレスコ画ステンドグラスのエントランスをジブリの主要キャストがオールスターで演出です。お花や動物もたくさん。写真に残せないのでしっかり自分の目に焼き付けます。

階段を降り、吹き抜けのホールに出ると、鑑賞に順路なんてありません。
2階に上がる螺旋階段や空中通路、展示室へ続く扉、外につながる扉・・・進む道はあなた次第です。

子どもたちにしか見えない秘密の通路や同線、抜け道もたくさんありそうですね。

また、地下エレベーター左手に、入場した際にもらえるフィルムチケットの投影機があります。「黄色い箱」が目印です。自宅で楽しむには、ミュージアムショップ「マンマユート」限定のフィルムビューワーを手に入れて帰ってください。

装飾

子どものための美術館。いやいや、そんなことありません。一見ファンタジーな施設ではありますが、前述のステンドグラスはもちろん、壁画から、階段の手すり、エレベーターのボタンまでこだわりが細部まで。この建物、いや空間全体がぜいたくなジブリ作品となっています。

ジブリのキャラクターたちがあっちにもこっちにもかくれんぼ。

コインロッカー

遠方からの旅行者にも嬉しい、コインロッカーがあります。利用後にコインが返ってくるので無料です。キャッシュレスの時代ですから100円硬貨をお忘れなく。

ネコバス

2階には実物大よりちょっと小さいネコバスがいます。ふかふかで実際に中に入れるのです!

小学生以下限定で!!

がーん!!

かわいそうな大人はネコバスには乗れませんが、ネコバスのソファのお部屋がありますので、想像力を存分に働かせて、目を閉じてネコバスの世界を・・・

ミニ映画

受付でもらったフィルムチケットの本当の出番です。

映像展示室「土星座」では期間ごとにオリジナル短編映画を鑑賞することができます。一般公開はされていない作品なので、ここでしか味わえない貴重な鑑賞ですよ。

図書閲覧室:トライホークス(三羽の鷹)

一見埋もれてしまいがちですが、私の一番のおすすめスポットです。宮崎駿監督とジブリ美術館のおすすめの絵本・児童書が置いてあります。ジブリに関連のある作品も多く、背景や物語のその先にまで触れることができます。

こちらで私はホフマン作の「クルミわりとネズミの王さま」を購入しました。

有名な「くるみ割り人形」のお話ですが、ここでこの本を購入すると、宮崎駿監督オリジナルのブックカバーをプレゼントしてもらえるのがポイント!!

他のどこにもないレアなお土産になりました♪

常設展示室:映画の生まれる場所(ところ)

映画の生まれる場所(ところ)」は5つの展示室で構成されています。

机の上には書きかけの絵や無造作に置かれた鉛筆。まるで、さっきまでこの机で誰かが何かを描いていたかのような制作部屋です。部屋の中には、本やたくさんのおもちゃ、壁にはイラストやスケッチが、隙間なく貼られています。

部屋を進むごとに、作品の制作過程を見守っていくことができます。

夢がある場所でしか人に夢を与える作品は完成しないのですね。

美術館の守り神

屋上には先ほど発見した巨神兵。5mもあるんですよ。
でもひとりぼっちでかわいそうです。小鳥さんたちが来てくれるといいね。

彼はジブリ美術館の守り神なんだそうです。

屋上にはラピュタつながりでこんなものも。

みんなこの石でムスカごっこしてました。ラピュタ好きはうずうずしていることでしょう。『読める・・・読めるぞ!!

カフェ 麦わらぼうし

建物の中でも特に目をひく鮮やかな色彩。大人気のミュージアムカフェです。

いつ見ても満席でした。確実に訪れたいなら開館直後にダッシュ要です。

カフェの前の手洗い場です。こんなところまで・・・ぬかりない。

ミュージアムショップ:マンマユート

マンマユートは「紅の豚」に出てくるピンクの空賊さん。ちょっぴり泣き虫だけど、ときにカッコよくきめてくれる、ママの子分です。イタリア語で「ママ、助けて」という意味だそうですよ。

ここでしか買えないオリジナルグッズもたくさん!ですが、私のおすすめはステンドグラス風のポストカード。写真、撮れなかったからね。

そしてマンマユートのショップバッグが何ともかわいいのです。

まとめ

覚えておきたい基本のき
  • チケット販売は毎月10日の午前10時開始
  • フィルムチケットをホールの黄色い投影機に差し込め!
  • カフェ利用は混雑必至!10時入場直後がおすすめ
  • オリジナルお土産で思い出を持って帰ろう
  • ジブリの世界で迷子になろう

世界初のサイトスペシフィックな公共建築 奈義町現代美術館

嫁です。サイトスペシフィックとは作品が特定の場所に帰属する性質を表すもの・・・ちょっと難しい・・・です

失礼にも一見ぱっとしませんが、きっと誰かと語りたくなる、魅力的な美術館でした。

奈義町ってどこ?

岡山県奈義町。鳥取県との県境に近い山麓です。中国山地を北に望む高原地帯であり、那岐山がそびえ、自然にあふれた場所です。

美術館は町の中心に位置する奈義町役場の西のカルチャーゾーンの中心として機能しています。町の図書館も併設されており、文化的役割を担います。

ナギモカ

なぎもか?聞いたことありませんか?

奈義 Museum Of Contemporary Art

NagiMOCAナギモカです。なんともおしゃれ。同じく磯崎新さんが設計された、ロサンゼルス現代美術館の通称「MOCA」になぞらえているのでしょうか。

アクセス

岡山駅から車で2時間。岡山空港からは約1時間30分。ひたすら走りますが、わりと一本道で分かりやすいです。津山でB級グルメ、ホルモンうどんを楽しみながら、車での訪問をおすすめします。公共交通機関一択の方は最寄のJR津山駅から路線バスが出ているのでご利用ください。

概略

荒川修作さん+マドリン・ギンズさん岡崎和郎さん宮脇愛子さんの3組の作家の作品を展示するために建てられた美術館です。企画展を行い、流行を追った七変化の美術館も多い中、一つの作品の魅力を最大限に魅せてくれる美術館、というのも乙ですね。作品たちにとっては何ともうれしい終の棲家でしょう。

奈義町現代美術館(通称NagiMOCA/ナギ・モカ)は作品と建物とが半永久的に一体化した美術館です。

太陽、月、大地と名付けられた3つの展示室から構成され、この土地の自然条件に基づいた固有の軸線を持っています。

借景には秀峰那岐山を望め、日毎、季節ごとにその表情の変化を据えることができます。

奈義町現代美術館 公式ホームページ

建築

奈義町現代美術館は平成6(1994)年にオープンしました。世界的な建築家、磯崎新さんが手がけています。

磯崎さんは2019年には建築界のノーベル賞、プリツカー賞も受賞されています。

第三世代の美術館

磯崎さんは美術館を3つの世代に分けて提唱されています。

  • 第一世代の美術館は、18世紀末までに成立した、王族貴族のコレクションを公開する目的で設立されたもので、宮殿や歴史的建造物に展示されています。ルーブル美術館など彩り鮮やかな壁に豪華絢爛に飾られているさまが思い浮かびます。
  • 第二世代は、企画展を魅せることを中心とした白い壁、いわゆるホワイトキューブと呼ばれる展示空間をもつ美術館です。MoMAなどが有名です。
  • 第三世代は、特定の場所に存在するために制作された美術作品を展示し、その場でしか体験できない作品を提供する美術館です。

同時に、この奈義町現代美術館を「第三世代の美術館」として位置づけました。そして、これが冒頭で触れた、サイトスペシフィックな(特定の場所に存在するために制作された作品を展示する)美術館と呼ばれる所以です。

奈義町現代美術館は、作品と建物が半永久的に一体化した公共建築として世界で初めての美術館なのです。

今でこそ地中美術館(2004年)や十和田市現代美術館(2008年)、豊島美術館(2010年)など、このようなスタイルの美術館を数多く見かけますが、これらの10年以上も前に新たな展示方法に注目されていたとは、規格外の巨匠ですね。

心に残ったことば

磯崎さんのお言葉で心に残ったものを紹介します。

この内部は、特定の作品のための、固有の空間となり、展示替えをするニュートラルなギャラリーではない。これを比喩的に説明するには、寺院の金堂を思い浮かべればいい。そこでは仏像がまず創られており、建物はそれを覆う鞘堂として建設された。美術館という枠が拡張して、美術品と建物が一体化している。私はそういう状態をつくりだすことが、すなわち≪建築≫であると考えている

奈義町現代美術館 常設カタログ「Nagi MOCA 磯崎新」より

寺院からイメージのヒントをつかむとは・・・先人の知恵、やはり光るものがあるのですね。

作品鑑賞

大地≪うつろひ-a moment of movement≫ 宮脇愛子

入り口を抜けるとまずは中庭のような空間に出ます。こちらは大地の部屋。水面の上に細いステンレスワイヤーが弧となり、時折風に揺れて景色を変えます。

端の廊下を抜けると今度は暗い地下のような建物内部へ。敷き詰められた黒い石を横に、石板の廊下を進みます。

陽から陰へのグラデーション、光と影の中に立ち現れる森羅万象のうつろひを感じる体験でした。

「在る」と「無い」を渡る。〈これ〉、「心」とはそうしたものではないだろうか。

奈義町現代美術館 公式ホームページ

ここでは演奏会などのイベントも開かれているようで、私が訪れた際も素敵な音色が流れていました。

ちなみに宮脇愛子さんは磯崎新さんの奥様でもあります。

≪HISASHI-補遺するもの≫ 岡崎和郎

「大地」の部屋を抜けて階段を上ると、の部屋につながります。意識していないと分かりにくいですが、部屋自体が三日月のかたちをしています。そして白い大きな平面の壁に3体の黄金色の「HISASHI」(庇)たちがいるのです。

自然界にも庇のように生物が日差しや雨風をしのぎ、休息できる岩陰や木陰のような空間が存在します。そして「HISASHI」の反対側には人が休息できるベンチが用意されています。

作品の題名にもある、「補遺」とは部分を通して全体を見通すための概念。「月」の部屋は円の一部である三日月の鞘の空間の補遺の庭なんだそうです。

また、室内には「月」の両端から自然光が入ります。中秋の名月の夜10時、月の光はちょうど大平面の白い壁を滑って影を落とすそうです。

太陽≪遍在の場・奈義の龍安寺・建築する身体≫ 荒川修作+マドリン・ギンズ

最後に太陽の部屋です。いよいよ外観からみた金色の巨大太鼓の中へ、突入です!

前室にある、傾いた円筒状の中に展示室への細い階段があります。昇る人、降りる人どちらか一方のみの交互通行。譲り合って見学です。そして一切の光源は見当たらず、真っ暗闇を進まなければなりません。どきどき感最高潮。
昇った先にあったものは・・・

逆光で暗い・・・すみません。

太鼓の白い皮面から自然光がそそぎ、部屋の風景がぼうっと浮かび上がります。まるで異次元にでもワープしたかように。そんな感覚を覚えました。

ようやく全景をつかめるよう目が慣れてくると、龍安寺の石庭を模した枯山水が両側面に。床と天井には同じ形のシーソーと鉄棒にベンチ。遊具たちは天井の方が1.5倍大きいです。床は赤色、天井は緑で塗分けられています。

後に学んだことですが、補色(赤と緑)の色使いは距離感を喪失させるそうです。

もっと奥まで進んで隅々まで見て体感して、作品を理解したい。そう思って歩き出しますが、ふらふら足元が安定しません。何かにつかまりたいほどに。巨大な円筒形の部屋自体が傾き、無重力空間に浮遊するかのようにバランスが保てないのです。もちろん、無重力空間味わったことありませんが。

石庭という自分よりもずっと昔からある揺るぎない景色が、ここでは歪み、上か下か右か左か・・・意識までもがふわふわします・・・

私の場合、浮遊する感覚が気持ち悪くなって長くは居られませんでしたが、ここで意識を集中させることができれば、今の私は新たなパワーや感覚を身に着けていたかもしれませんね。

住所・営業時間

岡山県勝田郡奈義町豊沢441

9:30~17:00(最終入館 16:30)

休館日 月曜日(月曜日が祝日の場合は開館)および祝日の翌日

駐車場あり

観覧料金

一般・大学生 700円
高校生 500円
小・中学生 300円

感想

いやぁ、圧倒されて心地よい疲れに襲われました。大自然の中、大地と月まではのんびり楽しんでいましたが、太陽で放り出される。世界の巨匠の意識に近づくにはまだまだ修行は必要そうです。

豊島美術館は建築好きにもおすすめアートスポット

嫁です。身近な水がここではアートの構成員。日常を忘れたいあなた・・・必見です。

瀬戸内国際芸術祭

2010年に始まった『瀬戸内国際芸術祭』。瀬戸内海の島々を舞台に開催される現代美術の祭典です。3年ごとに新たなアートパヴィリオンが産まれ、進化をとげていますが、もちろんそれぞれの美術館は通年鑑賞することができます。

今回は『瀬戸芸』が始まった2010年にOPENした豊島美術館を訪れました。

豊島

香川県と岡山県のおよそまんなか辺りの瀬戸内海。面積14.5㎢、人口約800人の島、「かな」と書いて豊島(てしま)。古くから水に恵まれ、農業や漁業、酪農も行われ、島の地形や自然環境を活かして、自然と共栄してきた地です。

1970年代以降は、産業廃棄物の不法投棄が問題となり、暗いイメージもつきました。

しかし、現在は廃棄物の処理も進み、島の人々の努力で美しい自然が取り戻されています。

訪問のきっかけ

アート好きな方なら雑誌の表紙や特集などで、一度は見かけたことがあるのではないでしょうか。

ぽっかり穴の空いた天井から見える真っ青な世界。その色彩とは反対に陰影を伴う簡素な世界。明らかに作られた異質な空間ですが、何か惹きつけられます。

かくいう私もその一人、雑誌で見て一目惚れいつか訪れたい美術館の一つでした。

ベネッセアートサイト直島

今回訪れた豊島美術館を含め、直島の地中美術館ベネッセハウスミュージアム、犬島の犬島精錬所美術館をはじめとする、株式会社ベネッセホールディングスと公益財団法人福武財団が展開するアート活動の総称が『ベネッセアートサイト直島』です。

豊島美術館

瀬戸内海を望む豊島唐櫃(からと)の小高い丘に建設されたアーティスト・内藤礼と建築家・西沢立衛による「豊島美術館」。休耕田となっていた棚田を地元住民とともに再生させ、その広大な敷地の一角に、水滴のような形をした建物が据えられました。広さ40×60m、最高高さ4.5mの空間に柱が1本もないコンクリート・シェル構造で、天井にある2箇所の開口部から、周囲の風、音、光を内部に直接取り込み、自然と建物が呼応する有機的な空間です。内部空間では、一日を通して「泉」が誕生します。その風景は、季節の移り変わりや時間の流れとともに、無限の表情を伝えます

ベネッセアートサイト直島 公式ホームページ

一般的な美術館といえば、絵画や彫刻、宝石を所蔵し、展示しているものですが、豊島美術館には一切そういったものはありません。あるのは水だけ

建築

前述のとおり、建築は十和田市現代美術館、軽井沢千住博美術館なども手掛けた西沢立衛さんです。建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞も受賞されています。

美術館の外枠はコンクリートでできていますが、こんなに大きい塊見たことない。そう思わせる理由の一つは建物に継ぎ目が見当たらないこと、ではないでしょうか。

工事にあたっては、美術館大の盛土をつくり、それを型枠にして鉄筋コンクリートを流し込む前代未聞の工法が用いられたそうです。建築の段階で既にアートです。

実際に目にすると、広大な自然の中にぬめっと巨大な生物が這っている、そんな感覚を覚えました。

内装

アーティストの内藤礼さんが手がけています。泉をモチーフとした「母型」なるアートワークを楽しむことができます。

美術館の歩き方

歩くことが苦でない私は歩いて向かいました。歩いている人はほとんどいませんでしたが(笑)レンタルサイクリングの人が多かったかな。それが正解でしょう。

上の写真右側にあるのがチケット売り場となっています。トイレコインロッカーもこちらにありました。

鑑賞料金 1570円

そして、もうなんか見えてますね。白い巨大生物が。

美術館は進行方向が決まっており、写真左の小径を進み、時計回りに巡ります。

すぐには辿り着けない・・・じらされてじらされて、どきどきします。

美術館自体が小高い丘の上に建てられているので、小径の途中から豊島の自然や瀬戸内海の絶景を一望できます。

そして見えてきた美術館の入り口・・・

なんと土足厳禁。こちらで靴を脱いで入ります。気になる方は裸足ではなくソックス履いての訪問をおすすめします。

トンネルのような入り口は何とも不思議な世界との狭間でもありました。

白い物体の中身は・・・ぜひ現地で体感してください。

ちなみに写真撮影NGです。

穴が開いてますね。

こちらはミュージアムショップ、カフェとなっています。

屋外のフリースペースにはくつろぎ、憩いのための場所が広がり、みんな思い思いに過ごしています。残念ながら、ひとり旅なのではしゃげませんでした。

住所・営業時間

香川県小豆郡土庄町豊島唐櫃607

3月〜 10月 10:00 〜 17:00(最終入館16:30)
11月〜 2月 10:00 〜 16:00(最終入館15:30)

休業日 火曜日(3月~10月) 火・水曜日(11月~2月)
ただし祝日は開館、開館日はこちら(公式ホームページ:開館カレンダー)で確認要

アクセス

岡山県側から
宇野港→家浦・唐櫃港(30分前後)

香川県側から
高松港→家浦・唐櫃港(30分前後)

豊島美術館へは唐櫃港が最も近いです。私は家浦港へ着き、シャトルバスで車窓観光しながら豊島美術館へ。美術館からは徒歩で唐櫃港に向かいました。美術館から唐櫃港へは歩いて20分程度かかりますが、高低差も大きく、暑い夏は結構疲れる距離です。
シャトルバスが一番楽ですが、本数は少ないので時刻表をリサーチしておくことをおすすめします。

詳細はこちら(公式ホームページ:アクセス方法)を参照してください。

豊島には他にも、心臓音のアーカイブ豊島横尾館トムナフーリなど、見どころ満載ですので、お時間のある方は巡ってみてください。

感想

作品を見に行く場所ではありません。こんな見方があったのか、こんな感じ方があったのか、自分の中の新たな感覚を見つけに、インスタレーションしてみてください。豊島の自然とともに、刻々と姿や音までも変える景色がそこには広がっています。

そして建物の中は意外に天井が低いところがあります。頭をゴーンと打ったのは、私だけではないはず。静寂な空間なので、音が響いて恥ずかしいです。頭上注意

神勝寺 禅と庭のミュージアムでインスタレーション

嫁です。この物体、あなたは一体何に見えますか。

彫刻家、名和晃平さんの「光庭(こうてい)が数々の芸術サイトや雑誌で取り上げられ、名前は知らずともこの作品を目にしたことがある人は多いでしょう。一度見ると忘れられない、インパクト抜群な芸術を求め、私もふらりとお邪魔してきました。

お寺なのかミュージアムなのか

今回伺ったのは広島県福山市にある新勝寺 禅と庭のミュージアムです。

「神勝寺 禅と庭のミュージアム」は、一碗の茶を喫し、墨跡と向き合い、命をつなぐための食を味わい、心身の垢を洗い流し、庭を散策し、といったさまざまな体験を通じて、禅とはなにかを感じるための場です。

神勝寺 禅と庭のミュージアム公式ホームページ

芸術に刺激を受けながら心の洗濯までできるなんて、なんてお得な場所でしょうか。いざいざ。

見た目は本当にお寺です。
ここにあのどらやきがあるとは到底信じられませんね。

住所

広島県福山市沼隈町大字上山南91

アクセス

アクセスの良い最寄り駅は新幹線も停まる「福山駅」ですが、公共交通機関での訪問はあまりおすすめはできません・・・私は車でお邪魔しましたが、施設の周りも自然があふれる緑多めな景色です。
福山駅からは車で30分程度です。駐車場は広めに確保してくださっており、無料です。

しかし、平日は福山駅から無料シャトルバスも運行しており、車の運転は難しい、という方には助かりますね。しかし、便数は少なめなので時刻表のリサーチは必須です。

拝観時間

9:00~17:00(最終受付16:30)

境内案内

こちら境内の案内図です。

クリックで拡大できます

松堂

総門をくぐり、歩を進めるとお寺ではなくなりました。

アルベロベッロのトゥルッリみたいな三角屋根が現れます。ここは寺務所の「松堂」です。禅のイメージに近いをメインとして構成されています。チケットやお土産を販売しています。

拝観料:1200円(大人)

なんとトイレ。「東司(とうす)」はお寺でのトイレの呼称だそうです。

手入れの行き届いた、どこを切り取っても絵になる風景です。不必要に何枚もシャッターを切ってしまいました。

秀路軒でお茶

境内はとても広いです。何と東京ドーム1.5個分。
お抹茶どころがあったのでほっとひといきつきましょう。

秀路軒は消失した表千家の茶席を復元したものです。この中には、茶祖である千利休を祀るお堂「利休堂」があります。

結構なお手前で。
人生で一度は言いたい一言、やっと言えました。

秀路軒:10:00~16:00
抹茶和菓子セット:800円

新勝寺うどん

今回私は訪れませんでしたが、新勝寺には「五観堂」というお食事処もあります。修行僧と同じ作法で名物うどんをいただける体験スポットです。

ロバを探せ

境内、千利休の茶室を再現した「一来亭」を過ぎ、無明院へと向かう道、何やら生き物の気配が・・・何とロバさんが飼育されています。名前は一休さん。

なぜここに彼がいるのかは分かりませんが散歩途中の癒しスポットでした。

無明院・荘厳堂

新勝寺の本堂がある無明院は境内の最も高いところに位置しています。ここからの景色は抜群!遠くの山景が見渡せます。紅葉の時期が楽しみですね。

こちらは無明院からの景色です。中根金作さんの作庭による枯山水庭園です。なんと中根さんは足立美術館やボストン美術館の庭園まで手掛けた有名な造園、作庭家です。

この施設を訪れた目的のひとつが白隠の作品に触れることでした。荘厳堂は白隠禅画墨蹟の常設展示館です。200点を超える作品が定期的に架け替えられ、日本初の白隠専門の展示館となっています。

白隠さんは禅の教えを広めるために多くの禅画を描かれました。館内の壁は墨一色で、日光も遮断されているので、画がぼうっと浮かび上がるようです。作品に集中して鑑賞することができました。

白隠といえば達磨のイメージでしたが、悟りや真理の象徴を意味する「円相」に深く感銘を受けました。心が洗われた・・・気がしました。

館内は撮影禁止だったので、写真はありませんが、あっちもこっちもそっちも白隠さん。なかなか不思議な体験でしたね。

無明院から鐘楼門へと続く長ーい階段です。私たちは境内を左回りで散策したので、階段を降りるコースでしたが、回り方は自由なので上ってくることもできますよ。

そうそう、ぜひ訪れる際はスニーカーをおすすめします。

見ざる、言わざる、・・・?

謎の物体あらわる

全ての施設を堪能し、寺務所まで帰ってくると、いよいよクライマックス!!橋を渡ると興味の塊でしかない謎のアートパヴィリオンが現れます。

洸庭(KOHTEI)

全長46m、実際に見るとその大きさに驚きます。

土曜日の昼間に訪れましたが、思ったより空いていました。入場時間が30分で区切られ、順番を待って中に入ります。

吸い込まれるー
ここが一番わくわくどきどきしました。

禅寺である神勝寺の境内に建つアートパビリオン「洸庭」。伝統的なこけら葺きを応用し、全体を木材で柔らかく包んだ舟型の建物が、石のランドスケープの上に浮かぶ。物質感のある石の海を抜け、ゆるやかなスロープを上がり、小さな入り口から舟のなかへ入ると、暗がりの奥には海原が広がり、静かに波立っている。波間には、かすかな光が反射している。

新勝寺 禅と庭のミュージアム 公式ホームページ

中の景色は実際に体験してみてのお楽しみですが、非日常のどこにもない空間です。周りの人間の空気を感じにくいので、私だけがこの世界にいる・・・そんな感覚を覚えました。外観とのギャップをお楽しみください。

船体の下まで近づけます。

遠くから見ると船が浮いているようですが、ちゃんと地中に固定されており、安心安心。スタッフの方のお話によると、新勝寺は造船にゆかりがあり、船をイメージして作られているそうです。

私にはどら焼きに見える・・・お腹空いてたのかな。

終わりに

神勝寺 禅と庭のミュージアム」は禅の世界とは縁のなかった人々への気軽な入り口として、そこに堂々と建っておりました。自然に触れて、穏やかな心を思い出す・・・素敵な場所でした。

他にも紹介できなかった浴室や座禅・写経体験などもあり、引き出しいっぱいです。また訪れたいですね。

チームラボ栗林公園光の祭に行ってきました

嫁です。インスタレーションって知ってますか?

もともと美術鑑賞が好きです。
印象派などの西洋絵画が一番好きですが、現代美術も大好きです。

今回は香川県の特別名勝、栗林公園チームラボがやってきました。
夜景好きな旦那さんと美術好きな嫁のコラボレーションでお邪魔してきましたー

インスタレーションって何?

冒頭で少し触れましたが、「インスタレーション」って聞いたことありますか?

インスタレーション【installation】 〔美〕(展示・装置の意)
特定の空間にさまざまな物体を配置してある状況を設定し、その空間全体を作品とする手法。また、その作品。1960年代末以後一般化した。

広辞苑第6版

私なりに簡単に言うと、作品の前に立ってそこで自分が何かを感じることで芸術を体験できる、作品の一部に入り込める現代アートです。自分の見てる世界感がガラリと変わるので、すごく刺激を受けるひとときです。

チームラボ

チームラボといえば、自分で描いたお魚が動き出す「お絵描き水族館」やマリーナベイサンズの常設美術館が有名ですね。最近は有名な史跡やホテルとのコラボレーションもよく見かけ、いろんな刺激を与えてくれます。

チームラボの世界はインスタレーションアートです。だと思ってます。

チームラボ栗林公園光の祭

開館は18:30~21:30。
19:30頃お邪魔すると大盛況行列ができてました。若い方や家族連れが多いですね。

通常の栗林公園にもお邪魔したことはありますが、暗く薄灯りの中進むだけでだいぶ印象が違います。「ぽろん、ぽろん、ころころころ・・・」不思議なBGMも流れてます。

なんだかアミューズメントパーク感が出てて、栗林公園の落ち着いた雰囲気がもったいない・・・

失礼ながら、ちょっとそう思いかけていました!!
しかし!公園を進んでいくと・・・光に吸い込まれ不思議な世界に足を踏み入れていく自分に気づきます・・・

作品たち

「呼応する木々」

「自立しつつも呼応する生命の森」

「浮遊する、呼応する球体」

「増殖する生命の石壁 – 紫雲山」

「水面に立ち続ける呼応する生命」

「浮遊する呼応するランプ – ワンストローク」

感想

すごく不思議な世界でした。
映え」な光景なので一番いい瞬間をカメラに残したい、最初はそう思っていました。カメラのシャッターを切る度に色が変わり、景色が変わるのです。
でもだんだん撮ることを忘れ、子供のようにはしゃいでいました。作品を触って、埋もれて、溶け込んで

是非自分で体感してほしいです。

普段は人が少ない景色の方が好きなのですが、ここではヒトまでもが作品の一部となり、引き立て役であり、鑑賞者でもあり、いい仕事してました。
二度と出会えない景色、そこに惹かれるのでしょうね。

楽しいデートになりました。

アーティゾン美術館に行ってきました

嫁です。大好きな美術館に行ってきましたー

アーティゾン美術館について

概略

アーティゾン美術館?聞き慣れないなぁと思う方もいるのではないでしょうか。
それもそのはず、ずっと休館していたブリジストン美術館が新しく生まれ変わり、
2020年1月18日にOPENとなったのです。

アーティゾンとは「ART」と「HORIZON(地平)」を組み合わせた造語だそうですー

住所

東京都中央区京橋1-7-2

アクセス

JR東京駅(八重洲中央口)、
東京メトロ銀座線・京橋駅(6番、7番出口)、
東京メトロ・銀座線/東西線/都営浅草線・日本橋駅(B1出口)から徒歩5分
地下鉄からも看板が出てたので迷わず辿り着けましたー

道端にはのぼり旗がずらっと並び、わくわくします。

入館・チケット料金

アーティゾン美術館が他の美術館と異なる点!
日時指定予約制であることです。
ネットから簡単に購入でき、チケットもスマホ画面を入館時に見せるだけです。

便利だけど、機械弱い人たちは大変だなぁと。
美術館好きな人たちはお年寄りも多いのに大変だなぁと。

時間も決まってるので、今日ふらっと行きたいなぁーと思っても、
今日は他の予定が押したからまた今度にしよーとか思っても
買いにくい・・・のが正直な感想です。

そして購入後のキャンセルはできません
日時の変更は無料でできるようです。
1回だけですが。

もちろん予約で完売していなければ、当日でも購入可能みたいなので、
ふらっと行きたい方もどうぞです。

一般:1100円(WEB予約チケット)
一般:1500円(当日窓口チケット)

学生なんと無料です!!

ちなみに私が訪れた日も、当日チケットは購入可能で、
予約しないと入れない、ことはなさそうです。

音声ガイド

多くの展覧会で目にする音声ガイド、大体有料のものが多いのですが、
ここはなんと無料で楽しめます。
といっても機械が美術館にあるわけではなく、
自分のスマホにアプリをダウンロードして使用します。
イヤホンも自身で準備が必要です。
もちろん私は事前にリサーチしていたので、ダウンロードもイヤホン持参もばっちりです。

そして音声ガイド、大体収録してあるのは20作品ほどですよね・・・
ここではなんと、ほとんど全部と言っていい程解説してくれるのです。

この作品、好きなのに、いろいろ知りたいのにスルーされてる・・・
なんて悲しいことはほとんど起こりません。
優しい。

特別展

開館記念展として、「見えてくる光景 コレクションの現在地」が開催中でした。
65年を越えて収集された石橋財団コレクションは約2800点、
その中から珠玉の約200点がお披露目です。

そして、展示室広いです。
建物の4、5、6階が展示室になっていて、旧ブリジストンの約2倍のフロア面積だそうです。展示のジャンルも幅広く、絵画に限らず古代オリエントの石像、日本画に陶磁器、
いろいろ忙しいです。
まぁ自分の趣向に異なるものはさくっと流しながら・・・。

見どころ

何といっても有名作家の作品がこれでもかと並びます。
モネ、ルノワール、セザンヌ、マティス、ピカソ・・・
また、新収蔵作品からも約30点が初公開です。
カサットやモリゾ、カンディンスキー、ジャコメッティなどです。
これから美術にハマりたいという方にも、自分のお気に入りを見つける、
素敵な出会いになる予感です。

写真撮影

日本の美術館は写真撮影NGなとことが多いです。
ここは、フラッシュをたかなければ、一部作品を除いて、ほとんど撮影OKでした。
優しい。

おすすめ作品

私のお気に入り作品を紹介します。

印象派のような柔らかいタッチの絵が好きです。
分かりやすい幸せな雰囲気がいい!

トゥルーズ・ロートレックの「サーカスの舞台裏

ラウル・デュフィの「オーケストラ

印象派じゃないんかーい。

好き嫌いはインスピレーションなのです。
細かいことは置いといて、この2枚が私の心に残りました。

ミュージアムショップ

ミュージアムショップでお気に入りの作品の
ポストカードを買って帰るのが好きです。
ここのショップはポストカードの種類がたくさん!
嬉しいポイントです。

クレジットカード、使えました!

最後に

同伴者がいたので、没頭はできませんでしたが、
それでも全部見て2時間程の滞在でした。

楽しかったー!!
まだ展示されていない作品がたくさんあるので、
ちょくちょく伺いたいと思います。